2024/12/2 「都心から一番近い森のまち」千葉県・流山市を視察
神奈川県町村会の行政調査として、11月13日(水)、千葉県・流山市を訪問、子育て支援の取組みを中心に、同市の様々な取組みについて学ばせていただきました。
流山市
流山市は、千葉県北西部に位置し、人口約21万人、面積約35㎢の市です。つくばエクスプレス(以下”TX”)の駅が3つあり(流山おおたかの森駅、流山セントラルパーク駅、南流山駅)、流山おおたかの森駅から秋葉原駅までは30分弱(区間快速)です。
キャッチコピー「母になるなら、流山市。父になるなら、流山市」はあまりに有名、「都心から一番近い森のまち」もキャッチフレーズとして掲げています。
※調査内容の詳細については、こちらの開成町ホームページ(町長の部屋-視察報告)に掲載しております。ご参照いただければ幸いです。
人口大幅増加
同市では、TX開業前から、“共働きの子育て世代”をメインターゲットに、沿線開発に注力しました。結果としては、2005年から2024年にかけて約6万人・約40%も増加し、今日もなお増加中です(2016年から2021年まで、人口増加率は全国792市の中でトップ)
SWOT分析
まちづくりの戦略は、井崎市長(2003年初当選。2023年6選)が就任直後に、市の課題や強みを経営的視点から捉える作業として、SWOT分析(強み弱みの分析)を実施したことに始まります。
交通の利便性が高いことが魅力であること、知名度が低いことが弱みであることなどの分析結果を踏まえ、「都心から一番近い森の街」を目標イメージとして、子育て世代、特に共働きの子育て世帯の住民誘致策を展開しました。
女性の就労支援
「母になるなら、流山市」の戦略の一環として、女性の就労支援に注力されました。具体的には、女性向け創業スクールの開校や(起業家の育成を目的とした市主導の事業)、物流センター内での保育所の整備(認可外保育所。外国人労働者も利用)などを行われ、戦略通り、“共働き世帯”の流入に結びついたとされます。20年前に共働き世帯をターゲットにしたことは先見の明があったと言えます。
駅前送迎保育ステーション
流山市を一躍有名にしたのがこの事業、との理解です。保護者の利便性向上=負担軽減が主たる目的との理解でいましたが、当初は、駅近の園に人気が集中し、満員となる一方で、駅から遠い園に空きが生じる不均衡を是正する目的があったとのことでした。
学童
利用者数と学童クラブ単位数(1単位=40名)は、2015年から2023年にかけてそれぞれ、1,244人から3,421人、23単位から84単位へ大幅に増加しました。現在、待機児童はゼロです。
私が驚いたのは、所管が教育委員会であること。学校との連携が上手く図られており、普通教室が共有されているとのことでした。
山神の感想
・これまで数多くの市町村を視察してきましたが、視察受け入れ側の話は大概、視察目的にも沿って、成功事例に関する説明に終始するのが常でした。しかしながら、今回の流山市は異なっていました。
・人口増加、特に子育て世代&こどもの増加に関するデータや要因の説明は当然あったものの、現在抱えている課題の詳細や対応策にも多くの時間が割かれ、こどもの権利に関する考えや今後取り組む予定の事業等に関する話もいただくことができました。
失礼な言い方になってしまいますが、本来は雲の上の自治体であるはずが、多くの課題を抱えていることを吐露され、少し身近に感じてしまいました。
・井崎市長は「1円まで活かす市政」を基本姿勢とされています。その姿勢が広報紙にも表れていました。月に3回も発行していることは驚きでしたが、さらに驚いたのはいまだに白黒だったことです(電子版はカラーとのことでした)。読んでもらってなんぼ、中身で勝負との方針でした。ぶれない市政運営、見習いたいです。
参加者からの給食費無償化に関する質問に対して、前述の通り、“第3子以降と年収360万円未満の世帯に対して、4,800円/月まで無償化“との回答でしたが、市政(≒市長)の基本姿勢・考え方は以下の通りと補足されました。
“必要なところに必要な手当てを行う”、“バラマキによる社会増は続かない”。さらに、“(市の予算編成は毎年厳しいこともあるが)給食費の無償化は近隣で最後になると思う”との主旨の発言もありました。僭越ながら、個人的にはまったく同感であります。
貴重な学びの機会をいただき、誠にありがとうございました。開成町のまちづくりにおいて参考にさせていただきます。
人と自然が調和した田舎モダンのまち・開成町 町長 山神 裕