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2024/5/27 不都合な真実・・・

5月15日(水)、(株)浜銀総合研究所さんが主催されたセミナーに参加しました。

テーマは「わが国の財政について~不都合な真実を正視する~」、講師は矢野康治氏(元・財務省主税局長、主計局長、財務事務次官)。

私自身、約30年間、金融市場で働く中で、我が国の財政の行く末を案じ、大学院で財政のゼミにて学び直す中で、その懸念が一層強まったという、我が国の財政状況に強い懸念を抱いている者のひとりです。

拝聴したお話には、共感するところ、そして、意を強くするところが少なくなかったです。今回はその概要をお伝えいたします。

◎結論
・まず、矢野氏の主張は、“日本の財政状況は世界で最悪”、“日本は財政状況に関して世界で最も楽観的な国”というものでした。

・ご経歴を踏まえ、現状に対する責任の一端を強くお感じで、自らを戦犯のひとりと認めてらっしゃる節がありました。その上で、無念さを感じつつ、退職後にお詫び行脚として、同旨の講演会を150回以上開催しているとのことでした。

・コロナ対応を引き合いに、我が国の財政運営における緩さ・甘さを指摘されました。

国家財政が年々悪化し続けた中でのコロナ対応、補正予算の総額は約57兆円にも上りました。東日本大震災からの復興財源確保のための復興特別所得税と同様に、(一時的な)増税や償還計画が打ち出されるものと考え、矢野氏も実際にその必要性を訴えたとのこと。

しかしながら、結局のところ、何もなされることなく、今日に至った。英国やフランスの事後の措置を引き合いに、先進国でここまで緩い国は日本だけ、と断言されました。

〇税収・歳出の推移
・日本の税収は回復傾向にあるものの、歳出増に追いつくことはなく、プライマリーバランスの赤字は解消されないまま・・・。要因はたくさんあるが、生産年齢人口=現役世代の減少が主因との見方でした。

〇平成2年度と令和6年度の歳入歳出の比較
・人口が減っているのに、借金が増えている。原因は高齢化。
・年金、医療、介護の社会保障関連経費が激増した分を(約26兆円)、借金(約30兆円増加)によって賄っている格好。

〇利払い費と金利の推移
・インフレ率の上昇等を受けた日銀のマイナス金利政策の解除により、金利は間違いなく上がる。
・国債残高は約1,000兆円、金利が1%上がれば、利払い額はいずれ10兆円/1年間増えることになる(cf.令和6年度利払い費 9.7兆円)

〇社会保障における受益と負担の構造
・国民負担率と社会保障支出の間には強い正の相関関係がある。
・我が国は、負担の割に給付が多い(“中福祉・低負担“と表現)。改革を断行しなければ、社会保障支出が膨張する可能性が高い。

〇国の資産と負債について
・わが国は負債も多いが、資産も多いとの指摘があるが、間違い。
・国債残高約1000兆円に対して、有価証券や貸付金など金融資産が約350兆円、有形固定資産が約200兆円あるから、ネットでは450兆円の負債である、との解釈がある。

しかしながら、現実的に、有形固定資産(道路など)は売れない。公的年金預かり金、財投債、政府短期証券といった負債が約300兆円あることを無視した議論であり、無意味。

〇MMTについて
・MMT(現代貨幣理論。Modern Monetary Theory。通貨発行権を持つ国家は債務返済に充てる貨幣を自在に創出できることから、「財源確保のための徴税は必要ではない」、「財政赤字で国は破綻しない」、「インフレにならない限り国債はいくら発行しても問題はない」とする理論)が公然と議論されている国はもはや日本だけ。

〇高齢化率と付加価値税
・高齢化率と付加価値税の間には強い正の相関関係がある。
・消費税は上げざるを得ない、との主張。少子高齢化が進む中で、減りゆく勤労世代で増え行く高齢者を所得税や法人税、保険料で支え続けるには限界がある。消費増税は、経済力のある高齢者を含めた国民全体で社会を支える構造になり、世代間の公平性にも寄与できる。

・大学生向けにも同じ資料で同じ趣旨の講演を重ねているが、受講生≒将来世代が最も強い関心を示すのがこの“消費税の特徴”。アンケート結果などから、このデータ・現実について知ったことにより、消費税増税の必要性に納得感を示す学生が極めて多い。

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〇山神の感想
・高度経済成長期もバブル期も、バブル崩壊後も国の借金は減ることはなく今日に至る。様々な要因があるが、国には財政を縛るルールも、それを監視する第三者機関もなく、自らのルールを自らが決められる点が最大の欠点だと考えます。

そして、右肩上がりの経済を前提に作られた制度が、微調整・修正は加えながらも、抜本的な見直しがなされることはいまだにない。

もし借金が減ることがあるとすれば外圧だと考えます(一段の格下げ、海外勢の日本国債離れなど)。

人と自然が調和した田舎モダンのまち・開成町 町長 山神 裕