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2024/5/17 地方自治体「持続可能性」分析レポート 2/2

(前日の投稿の続きとなります)

今般、人口戦略会議が、全国の地方自治体の持続可能性について、あらためて分析を行い、公表しました。これまでと同様の定義にて、消滅可能性自治体を公表しました。

加えて、今回、新たに、“封鎖人口”を用いた推計を活用した分析が行われました。“封鎖人口“とは、特定の地域において、他地域との人口移動がなく、その地域の人口は、出生数と死亡数によって変動するものと仮定した場合の人口、と定義されます。

9つの分類

“封鎖人口”を用いた新たな分析手法では、2020年から2050年の間の“移動仮定における若年女性人口の減少率”と“封鎖人口における若年女性人口の減少率”という2つの要素から、自治体を大きく4つの類型に分類した上で、さらに細かく9つに分類しました。

大きい4つの分類は、
A.自立持続可能性自治体
B.ブラックホール型自治体
C.消滅可能性自治体
D.その他の自治体
です。

詳しくは下表の通りですが、それぞれの分類において、自然減対策かつ/もしくは社会減対策が必要とされる旨が言及されています。

B、C、Dについては、“移動仮定における若年女性人口の減少率”と“封鎖人口における若年女性人口の減少率”の水準に応じて、さらに2~3つに細分化されています。

先に結論をお伝えしますと、開成町は“A=自立持続可能性自治体”に位置付けられました。

各分類の定義と該当する自治体数は、以下の通りとなります。

A.自立持続可能性自治体

・65自治体(全体1,729自治体の3.8%)
・移動仮定、封鎖人口ともに若年女性人口の減少率が20%未満の自治体
減少率が20%以下であれば、100年後も若年女性が5割近く残存し、持続可能性が高いとの考えに基づきます。

B.ブラックホール型自治体

・25自治体(全体の1.4%)
・移動仮定における若年女性人口の減少率が50%未満である一方、封鎖人口における減少率が50%以上の自治体

・そのうち、移動仮定における若年女性人口の減少率が20%未満 = B-①
・そのうち、移動仮定における若年女性人口の減少率が20%~50%未満 = B-②
・人口の増加分を他地域からの人口流入に依存しており、且つ、当該地域の出生率が低い、とされています。

・ちなみに、“ブラックホール”は本来、“宇宙空間に存在する天体のうち、極めて高密度で、極端に重力が強いために物質だけでなく光さえ脱出することができない天体”を意味します。ときに比喩として、中に入ってしまうと、どんなものでも外に出られない、ということを意味します。

C.消滅可能性自治体

・744自治体(全体の43.0%)
・移動仮定における減少率が50%以上の自治体

・そのうち、封鎖人口における若年女性人口の減少率が20%未満 = C-①
・そのうち、封鎖人口における若年女性人口の減少率が20%~50%未満 = C-②
・そのうち、封鎖人口における若年女性人口の減少率が50%以上 = C-③。数字が示す通り、最も深刻とされる分類。該当する自治体数は23(全体の1.3%)です。

D.その他の自治体

・895自治体(全体の51.8%)
・上記の分類に該当しない自治体
・そのほとんどで、若年女性人口が減少する見込み。減少の状況によって、必要とされる対策が異なることに留意する必要がある、とされています。

・移動仮定における減少率が20%未満で封鎖人口における若年女性人口の減少率が20%~50%未満 = D-①
・移動仮定における減少率が20%~50%未満で封鎖人口における若年女性人口の減少率が20%未満 = D-②
・移動仮定における減少率、封鎖人口における若年女性人口の減少率のいずれも20%~50%未満 = D-③

9分類における考察

・今回、“封鎖人口”という概念を加味した新たな分析がなされた背景には、現在、各自治体で講じられている人口減少対策が社会減対策に偏重しているとの課題意識があったとされます。

その意味で、封鎖人口における若年女性人口の減少率が20%以上のすべての分類、すなわちB-1、B-2、C-2、C-3、D-3の自治体においては、自然減対策により注力すべきことが示唆されている、と解釈されます。

・自立持続可能性自治体65のうち、人口規模1~5万人の自治体(全体で684自治体)が34を占めます。他ならぬ開成町がそのひとつです。

各自治体、それぞれの要因があろうかと考えられますが、関東地方で該当している町について簡単に調べてみたところ、開成町との共通点がありました。

群馬県吉岡町(人口約2.2万人): 特徴としては、前橋市や高崎市へのアクセスの良さ、鉄道駅はないが道路網が充実、都市部と比較した地価等の安さなどが挙げられます。“人口増加 ⇔ 商業施設の増加“の好循環が生まれている模様です。

「都市近郊農村」 を標榜しており、開成町の「田舎モダン」と近いコンセプトと考えられます。

埼玉県滑川町(人口 約2.2万人): 東武鉄道が走り、森林公園駅に次いで、2002年、つきのわ駅を開業した町。同駅周辺の土地区画整理事業に合わせ、東武鉄道が住宅を開発。池袋から1時間の距離。

東武鉄道さんを小田急電鉄さんに、池袋を新宿に読み替えると、開成町と酷似しています。

吉岡町と同様に、“人口増加 ⇔ 商業施設の増加”の好循環が起きている模様です。

・しかしながら、今日までに若年女性人口を含む人口全体が増えているからと言って、また、今回の分析において、“A”にランクされたからと言って、将来が保証されたわけでも何でもありません。

仮に好環境に恵まれている/いたとしても、ひとつの自治体単位で見れば、可住面積や開発余地の有無等々によっては、むしろ、今がピークである可能性がないとは言えません。

たゆまぬ発展を遂げるためには、好環境に甘んじるのではなく、好環境をさらに活かす意気込みで、好循環を引き続き追求するスタンスが肝要だと考えます。

同時に、国の人口、開成町の場合は神奈川県の人口が既に減少過程に突入したことを冷静に受け止め、将来的な人口減少局面も視野に入れながら、過剰でない、適度な規模でのまちづくりを推進することが、中長期的には大事だと認識しています。

※人口戦略会議が公表した”令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポートはこちらから

人と自然が調和した田舎モダンのまち・開成町 町長 山神 裕