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2024/5/16 地方自治体「持続可能性」分析レポート 1/2

消滅可能自治体

日本創成会議(座長: 元総務大臣・増田寛也氏)が「消滅可能性自治体」なるものを発表し、各方面に衝撃を与えてから、早10年が経過しました。

今般、国立社会保障・人口問題研究所が昨年公表した「日本の将来推計人口」(昨年4月に公表)と、「日本の地域別将来推計人口」(昨年12月に公表)に基づき、人口戦略会議(※1)が全国の地方自治体の持続可能性について、あらためて分析を行いました。

今回の分析においても、前回同様、”2020年から2050年までの30年間に、20~39歳の女性(以下“若年女性”)の人口が、50%以上減少する可能性がある自治体”を「消滅可能性自治体」としています。

※1 人口戦略会議: 民間の有識者で組織されたグループ。議長は日本製鉄名誉会長・三村昭夫氏、副議長は増田寛也氏

封鎖人口

人口戦略会議では、各自治体が取り組んでいる現行の人口減少対策は“社会減対策”(※2)に重きが置かれ過ぎており、出生率の上昇に結びついていないことを課題視し、今回、新たに“自然減対策”(※3)の視点からも分析が行われました。

※2 人口の社会増減: 転入数と転出数の差
※3 人口の自然増減: 死亡数と出生数の差

具体的には、“封鎖人口”の仮定した推計データを活用した分析がなされました。“封鎖人口“とは、特定の地域において、他地域との人口移動がなく、その地域の人口は、出生数と死亡数によって変動するものと仮定した場合の人口、と定義されます。

新たな分析の狙いとしては、若年女性の人口動向に影響を与えている要因が構造的に分かり、地域特性に応じた人口減少対策の重要性を明らかにすることです。

例えば、封鎖人口において若年女性人口が急減する地域では、出生率の向上という「自然減対策」が重要な課題となります。逆に、封鎖人口では人口減少は穏やかだが、移動仮定の分析では人口が急減する地域では、人口流出の是正といった「社会減対策」が重要となる、といった考え方となります。

要は、地域によって、実態は異なっていることから、取り組むべき対策も異なってきてしかるべきであり、すべての自治体が、近隣自治体間で人口を奪い合うゼロサムゲームのような取り組みを続けている場合ではない、との主張と理解されます。

消滅可能自治体は減少

さて、今回の分析の結果ですが、人口戦略会議が言うところの消滅可能自治体(若年女性人口が、2020年から2050年までの間に、50%以上減少する自治体)は744自治体、全国の1729自治体に占める割合は43%でした。

前回2014年の896自治体と比較すると、152自治体減少しました。その中身としては、239自治体が脱却した一方で、新たに99自治体が該当し、差し引き152自治体の減少となった格好です。

ただ、人口戦略会議は、消滅可能自治体の数は減ったものの、少子化の基調自体は変わっていない、との見方をしています。なぜなら、今回の改善は、前回に比べて、外国人の入国超過数が大幅に増加したことが一因である、と分析しているためです

具体的な日本人人口の推計値で見ると、出生率仮定値は、前回の1.40(2065年時点)から、1.29(2070年時点)まで低下しています。

次回に続きます。次回は、前述の“封鎖人口”を用いた新たな分析手法とその結果をお伝えします。

※人口戦略会議が公表した”令和6年・地方自治体「持続可能性」レポート”はこちらから

人と自然が調和した田舎モダンのまち・開成町 町長 山神 裕