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2024/5/24 感覚論を脱した人口減少対策

過日、関東地方の町村長の会で、セミナーを受講しました。テーマは、「関東・山梨の人口動態~感覚論を脱し、人口減少社会とEBPM(※1)で闘う」。講師は、(株)ニッセイ基礎研究所の人口動態シニアシサーチャーであられる天野馨南子氏。

※1 EBPM: Evidence Based Policy Making。証拠に基づく政策の立案。政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策の目的を明確化した上で、合理的な根拠に基づくものとすること。

不肖ながら、私も人口動態について多少は学んだ自負がありましたが、まだまだ未熟、目から鱗の連続でした。天野先生のアプローチは、データや根拠を重視し、感覚的な話・通説・一般論の類を嫌うもの。コトの実態・本当の中身を分析し、施策に繋げるべきとの主張で、尊敬する藻谷浩介氏と似た感じでした。

物言いは厳しめでしたが、分かり易く、きつく言わないと伝わらないとの思いに因るところもある、との印象でした。

お話の内容としては以下の通りでした。(資料の開示は禁じられているため、数字等はお示しできません)。学びの多い機会となり、特に国や県の施策に照らして、非常に有用な示唆がありました。開成町の様に人口2万に満たない小規模自治体においては、政策に直接結びつくものではないと考えますが、多くのヒントをいただきました。

〇少子化対策について
・目指すべきは“こどもの数の維持”であり、“出生率の維持”ではない。
・なぜなら、婚外子比率をゼロと見なせる日本では、合計特殊出生率は夫婦のもつこどもの数の平均でないから。

〇合計特殊出生率について
・低下の主因は、①未婚者割合の増加と、②既婚者のもつこどもの平均数の低下
・都県別で見た場合、“人流(人口の増加・減少)”の影響を無視すると実態を見誤る。
・合計特殊出生率と出生数の増減率に相関関係なし。

〇関東地方都県の出生減分析(1970年⇒2022年の変化を分析)
・関東各都県のデータを基に、それぞれの“実態”を把握し、実態に応じた施策の必要性を説かれました。

〇多子世帯支援について
・多子世帯(こども3~4人)の最終出産年齢を正しく認識することとそれに応じた施策の重要性を説かれました。

〇東京一極集中の実態
・東京の社会増の最大の要因は雇用。
・ジェンダーレス雇用に積極的な企業が人気。

〇データが示す関東・山梨に必要とされる少子化対策
・未婚化解消や雇用・人事制度・働き方改革などにおける施策提言をいただきました。

ひとつの結論として、人口減少対策は感覚に因ることなく、都県(地域)毎のデータ・実状に応じて講じられるべき、とのことでした。

RESASなど公的に公開されているデータや、町が独自に保有するデータなどを一層活用することの重要性を痛感した次第です。

人と自然が調和した田舎モダンのまち・開成町 町長 山神 裕